生体肝移植術(レシピエント)
肝移植
肝硬変や劇症肝炎などの末期肝不全に対して、家族などから提供された肝臓の一部を移植する手術。所要時間は10〜15時間と、オペ室で最も長く重い手術のひとつ。凝固障害を伴う大量出血、無肝期の循環変動、多職種の長時間連携が特徴。
ここは要注意
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- 血流再開直後の高カリウム血症は心停止を起こす。この瞬間に全員が心電図を意識する。
- 凝固障害と低体温は悪循環になる。加温を最初から最大にしておく。
- 10時間を超える手術で記録が抜けやすい。輸血量・出血量・尿量・薬剤の時刻を確実に残す。
- グラフトの汚染・損傷は取り返しがつかない。バックテーブルの清潔操作を妥協しない。
体位・麻酔・皮膚消毒
体位
仰臥位。上腹部を大きく開くため肋弓引き上げ用の開創器を使用する。超長時間のため除圧と保温を最初に完璧にする。
麻酔
全身麻酔。動脈ライン、中心静脈カテーテル、大量輸血用の太いルート、体外循環(静脈-静脈バイパス)を用いることもある。凝固能のモニタリングを継続的に行う。
皮膚消毒
乳頭ライン〜大腿上部、側方は両腋窩線まで。広範囲を厳格に消毒する。
必要物品・器械
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基本セット
- 開腹基本セット
- 肋弓引き上げ用の開創器
- 長い鉗子・鑷子・持針器、血管外科基本セット
特殊器械
- 血管遮断鉗子(下大静脈・門脈・肝動脈用の各種)
- グラフト(移植肝)用のバックテーブル一式と保存液・氷
- マイクロ器械と手術用顕微鏡(肝動脈吻合用)
- 超音波吸引装置(CUSA)、術中超音波、ドプラ血流計
- 急速輸血装置、自己血回収装置、体外循環装置(使用時)
ディスポーザブル製品
- 臓器保存液、氷
- 血管縫合糸(各種)、胆管吻合用の極細糸、胆管チューブ
- 止血材(大量に)、フィブリン糊、シート型止血材
- 大量輸血・血液製剤(赤血球・血漿・血小板)のルート
- 免疫抑制薬の点滴ライン、ドレーン(複数)
器械出し看護師のポイント
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- 10時間を超える手術。交代が必ず入る。器械の配置、カウント数、使用中の材料を口頭で確実に引き継ぐ。
- 工程は「病肝の摘出 → 無肝期 → 静脈吻合 → 門脈吻合 → 血流再開 → 肝動脈吻合 → 胆管吻合」。今どこかを常に把握する。
- 無肝期(自分の肝臓がない時間帯)は循環が最も不安定になる。この時間帯は術野から目を離さない。
- 肝動脈吻合は顕微鏡下のマイクロ操作。極細糸の針を1本ずつカウントし、静かに器械を渡す。
- グラフトはドナーの善意そのもの。バックテーブルを独立した清潔野として扱い、冷却を絶やさない。
- 凝固障害でにじむような出血が続く。止血材とフィブリン糊を切らさず補充する。
外回り看護師のポイント
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- 大量輸血が前提の手術。血液型・クロスマッチ・在庫・払い出し経路を入室前に確認し、輸血部と連絡体制を作る。
- 凝固能のモニタリング(血栓弾性描図など)の結果に応じて製剤を追加する。測定と報告のサイクルを担う。
- 無肝期と血流再開直後は血圧・電解質(特にカリウム)・体温が大きく変動する。麻酔科と密に情報を共有する。
- ドナー手術と時間を合わせる。摘出時刻、阻血時間、血流再開時刻を正確に記録し、両チームで共有する。
- 免疫抑制薬の投与タイミングは厳密。指示時刻に確実に投与できるよう準備する。
- 超長時間手術。体位固定後の除圧確認に加え、術中も定期的に圧迫部位を評価し記録する。スタッフの交代も計画する。
緊急時の対応
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- 血流再開直後の心停止(高カリウム血症):直ちに救急カートと除細動器を使える状態にし、カルシウム・インスリン・グルコースを準備する。
- 大量出血:急速輸血装置とセルセーバーを稼働させ、輸血の追加払い出しを最優先で動かす。凝固因子製剤の手配も同時に行う。
- 肝動脈血栓が疑われたら(ドプラで血流が消失)、直ちに報告し、再吻合の準備をする。移植肝の生死に関わる。
- 低体温・アシドーシス・凝固障害が同時に進んだら、加温を最大にし、製剤の追加を急ぐ。
確認先・参考資料6
このページの本文は特定の文献を書き写したものではないため、文ごとの一次出典はありません。下記は記述が正しいかを確かめるための公的資料です。実際の手順は必ず自施設の手順書と指導者の指示を優先してください。
- 手術医療の実践ガイドライン日本手術医学会手術室の運用、清潔操作、手術体位、器械・機器の取り扱い、医療安全
- 指針・ガイドライン(安全な麻酔のためのモニター指針・気道管理ガイドラインなど)日本麻酔科学会麻酔方法、術中モニタリング、気道管理、筋弛緩モニタリング
- 手術看護業務基準ほか学会刊行物日本手術看護学会器械出し・外回りの業務基準、体位固定、器械カウント、申し送り
- 消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン日本外科感染症学会皮膚消毒、予防的抗菌薬の投与と追加、手術部位感染(SSI)の予防
- 褥瘡予防・管理ガイドライン日本褥瘡学会術中の体圧分散・除圧、褥瘡と皮膚障害の予防
- Mindsガイドラインライブラリ日本医療機能評価機構各診療科の診療ガイドラインの横断検索(学会公式版の所在確認)
リンクは2026年8月4日時点で実在を確認したものです。