術式一覧へもどる

歯科口腔外科顎矯正

SSRO

下顎枝矢状分割術(顎矯正手術)

顎の変形(下顎前突・後退など)に対して、下顎の骨を縦に割って位置を移動し、プレートで固定する手術。所要時間は3〜5時間程度。気道の変化と術後の腫脹が大きく、周術期の気道管理が最重要になる。

ここは要注意!

  • 咽頭パッキングの抜去忘れは窒息につながる。挿入と抜去を必ず記録し、全員で確認する。
  • 術後の気道浮腫は数時間かけて進行する。抜管後の呼吸状態の観察を強く申し送る。
  • 顎間固定中の嘔吐は窒息のリスク。ワイヤーカッターの常備を必ず伝える。
  • スプリントは代替品がない。紛失・破損は手術を止める。

体位・麻酔・皮膚消毒

体位

仰臥位+頭部を安定させる。術中に咬み合わせを確認するため、頭位が動かないよう固定する。

麻酔

全身麻酔(経鼻挿管が必須。口腔内が術野で、術中に咬み合わせを確認するため)。低血圧麻酔を併用することがある。

皮膚消毒

顔面全体と口腔周囲、頸部まで。経鼻チューブの固定を確認してから消毒する。

必要物品・器械

基本セット

  • 口腔外科基本セット
  • 粘膜剥離子、骨膜剥離子、開創器(下顎枝用)、持針器

特殊器械

  • レシプロケーティングソー/往復鋸、骨ノミ(分割用)、マレット
  • チタンプレート・スクリューシステムと専用ドライバー、ドリル
  • 顎間固定用のワイヤー・スクリュー・ゴム
  • 術前に作製したスプリント(咬合位を決めるマウスピース)
  • 神経を確認するための拡大鏡・ヘッドライト

ディスポーザブル製品

  • チタンプレート・スクリュー(ロット記録が必要)
  • 止血材、洗浄用生食
  • ドレーン(血腫予防)、経鼻チューブ固定材
  • 術後の冷却材・弾性バンド

器械出し看護師のポイント

  1. スプリント(咬合位を決めるマウスピース)は術前に技工所で作製された唯一無二のもの。紛失・破損は手術を止める。専用の置き場所を決めて管理する。

  2. 下歯槽神経が骨の中を走っている。分割時に神経を確認する場面では静かに、確実に器械を渡す。

  3. 骨ノミとマレットで骨を割る場面がある。力のかかる操作なので、器械をしっかり渡す。

  4. プレートとスクリューの種類・長さが多い。使用順に並べ、長さを復唱して渡す。

  5. 顎間固定用のワイヤーやゴムは細かい。使用本数をカウントする。

  6. 口腔内の血液が気道に流れる。吸引を切らさず、咽頭パッキングの有無と枚数を確認する。

外回り看護師のポイント

  1. 術後の気道浮腫が最大のリスク。抜管の判断が慎重になり、挿管したままICUへ行くこともある。再挿管物品と気管切開セットを準備しておく。

  2. 咽頭パッキング(ガーゼ)を入れる場合、抜去を絶対に忘れない。抜去したことを全員で確認し記録する。

  3. 顎間固定を行った状態では口が開かない。嘔吐時に窒息する危険があるため、ワイヤーカッターやハサミをベッドサイドに常備することを申し送る。

  4. 出血量が多くなることがある。輸血の準備状況と、低血圧麻酔の方針を麻酔科と共有する。

  5. プレート・スクリューの製品情報とロット番号を記録する。

  6. 予測される合併症:下歯槽神経麻痺(下唇のしびれ)、気道閉塞、出血、骨片の不正な分割、咬合不全。

緊急時の対応

  1. 術後の気道閉塞:直ちに応援を呼び、顎間固定を解除(ワイヤーカッター)し、再挿管または気管切開の準備をする。

  2. 術中の大量出血(下歯槽動脈など):吸引と止血材を追加し、輸血を手配する。

  3. 抜管時の喉頭痙攣・出血:太い吸引と再挿管物品をすぐ使える状態にする。

  4. 神経損傷が疑われたら術者へ報告し、術後の感覚障害の評価方法を申し送る。

歯科口腔外科の他の術式

今日もおつかれさま。ひとつ覚えたら、明日はもう少しラクになります。