鎖肛根治術
鎖肛手術
生まれつき肛門がない(鎖肛)赤ちゃんに対して、直腸を正しい位置におろして肛門を作る手術。新生児期に人工肛門を作り、数か月後に根治術を行うことが多い。所要時間は2〜4時間程度。将来の排便機能を左右する繊細な手術。
ここは要注意
4
- 括約筋の中心を外すと将来の排便機能が損なわれる。慎重な操作を支える意識を持つ。
- 筋弛緩薬を使いすぎると括約筋の刺激反応が出ない。麻酔科との共有を怠らない。
- 乳幼児の低体温は進行が速い。保温を最優先の看護として扱う。
- 腹臥位での急変は蘇生が困難。緊急体位変換の手順を事前に確認しておく。
体位・麻酔・皮膚消毒
体位
腹臥位でジャックナイフ位(後方矢状切開の場合)。乳幼児のため加温を最優先し、顔面・胸部の除圧を確実に行う。
麻酔
全身麻酔(+仙骨硬膜外麻酔)。乳幼児のため体重に応じた薬剤量を厳密に管理する。
皮膚消毒
殿部・会陰部を中心に。人工肛門がある場合は被覆して分離する。
必要物品・器械
10
基本セット
- 小児用小手術セット(極小の器械一式)
- 細い剥離剪刀、有鉤鑷子、極細の持針器
特殊器械
- 筋電気刺激装置(括約筋の位置を確認する。この手術の要)
- 小さな自動開創器、細い鉤
- 拡大鏡(ルーペ)またはヘッドライト
- 腹腔鏡下で行う場合は乳幼児用の3〜5mm腹腔鏡一式
ディスポーザブル製品
- 細い吸収糸(腸管と皮膚の縫合用)
- 肛門拡張用のブジー(術後に使用する。サイズを確認)
- 加温マット、乳幼児用の温風式加温ブランケット
- 洗浄用生食、ドレーン(留置しないことも多い)
器械出し看護師のポイント
6
- 括約筋の位置を筋電気刺激装置で確認しながら進める。刺激のたびに手術が止まるので、そのタイミングを把握する。
- 刺激装置を使う場面では筋弛緩薬の効果が邪魔になる。麻酔科との共有状況を理解しておく。
- 器械はすべて乳幼児用の極小サイズ。成人用や小児用と混ぜない。
- 直腸を正しい位置(括約筋の中心)におろすのが手術の要。術者が最も集中する場面を静かに支える。
- 腸管を扱うため汚染操作になる。器械の線引きを明確にする。
- 術後の肛門拡張用ブジーのサイズを術者に確認し、準備しておく。
外回り看護師のポイント
6
- 乳幼児は極めて低体温になりやすい。入室前から室温を上げ、加温マットを準備し、露出時間を最小限にする。
- 体重を正確に把握する。すべての薬剤量と輸液量が体重で決まる。
- 筋電気刺激を使うため筋弛緩薬に制限がある。麻酔科と必ず共有する。
- 腹臥位・ジャックナイフ位への体位変換は人数を確保し、気管チューブとラインを守りながら行う。
- 術後は肛門拡張(ブジー)を継続する必要がある。方法と開始時期を保護者・病棟へ申し送る。
- 予測される合併症:創部感染、肛門狭窄、便失禁・排便障害、直腸粘膜脱。
緊急時の対応
4
- 乳幼児の急変は進行が速い。体重に応じた薬剤量と乳幼児用の蘇生物品を室内に用意しておく。
- 低体温の進行:加温を最大にし、輸液加温を追加する。
- 尿道・腟・膀胱の損傷が疑われたら、直ちに報告し、修復物品と該当科のコンサルトを手配する。
- 腹臥位での心停止に備え、仰臥位への緊急体位変換の手順と人員を確認しておく。
確認先・参考資料6
このページの本文は特定の文献を書き写したものではないため、文ごとの一次出典はありません。下記は記述が正しいかを確かめるための公的資料です。実際の手順は必ず自施設の手順書と指導者の指示を優先してください。
- 手術医療の実践ガイドライン日本手術医学会手術室の運用、清潔操作、手術体位、器械・機器の取り扱い、医療安全
- 指針・ガイドライン(安全な麻酔のためのモニター指針・気道管理ガイドラインなど)日本麻酔科学会麻酔方法、術中モニタリング、気道管理、筋弛緩モニタリング
- 手術看護業務基準ほか学会刊行物日本手術看護学会器械出し・外回りの業務基準、体位固定、器械カウント、申し送り
- 消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン日本外科感染症学会皮膚消毒、予防的抗菌薬の投与と追加、手術部位感染(SSI)の予防
- 褥瘡予防・管理ガイドライン日本褥瘡学会術中の体圧分散・除圧、褥瘡と皮膚障害の予防
- Mindsガイドラインライブラリ日本医療機能評価機構各診療科の診療ガイドラインの横断検索(学会公式版の所在確認)
リンクは2026年8月4日時点で実在を確認したものです。