冠動脈バイパス術
CABG
狭くなった冠動脈の先に、別の血管(内胸動脈、大伏在静脈など)をつないで血流を回復させる手術。人工心肺を使う方法と、心臓を動かしたまま行う方法(オフポンプ)がある。所要時間は4〜6時間。オペ室で最も準備物品が多い手術のひとつ。
ここは要注意
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- 極細針の紛失は再開胸につながる。1本ずつのカウントを絶対に省略しない。
- ヘパリンとプロタミンの取り違えは致命的。薬剤の受け渡しは必ず声出し確認する。
- グラフトを乾燥させたり器械で挟んだりすると使えなくなる。取り扱いを最優先で丁寧に。
- 除細動器を「あとで準備」にしない。入室時から使える状態にしておく。
体位・麻酔・皮膚消毒
体位
仰臥位。胸骨正中切開のため両上肢は体側固定。下肢からグラフトを採取する場合は下肢も消毒範囲に含め、外旋位にする。
麻酔
全身麻酔(気管挿管)。動脈ライン、中心静脈カテーテル、肺動脈カテーテル、経食道心エコーなど多数のモニタリングを装着する。導入前の準備に時間がかかる。
皮膚消毒
頸部〜大腿(下肢グラフト採取時は足関節まで)。前胸部から下肢まで広範囲を消毒する。
必要物品・器械
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基本セット
- 開心術基本セット
- 胸骨鋸(電動)、胸骨開創器
- マイクロ持針器、マイクロ剪刀、微小血管用鑷子
特殊器械
- 人工心肺装置(体外循環)と回路、臨床工学技士との連携
- 大動脈遮断鉗子、心筋保護液の注入ライン
- 内胸動脈剥離用の開創器(マンモリーリトラクター)
- オフポンプ用のスタビライザー、ハートポジショナー
- 血管用マイクロ器械、ブルドッグ鉗子
- 一時的ペーシングワイヤーとペースメーカー
ディスポーザブル製品
- 人工血管・グラフト保存用のヘパリン加生食
- 極細の血管縫合糸(7-0、8-0など)を多数
- 心筋保護液、ヘパリンとプロタミン
- 胸骨閉鎖用ワイヤー、胸腔・縦隔ドレーン
- 自己血回収装置(セルセーバー)の回路
- 止血材、フィブリン糊
器械出し看護師のポイント
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- 極細の血管縫合糸を多数使う。針が非常に小さいため、1本ずつ確実にカウントし、紛失を絶対に出さない。
- 吻合の場面では術者が糸を持ったまま動けない。針の向きを揃えて渡し、使用済みの糸を即座に回収する。
- 採取したグラフト(内胸動脈・大伏在静脈)は乾燥・損傷させないよう、ヘパリン加生食に浸して保護する。
- 人工心肺の開始・離脱のタイミングは決まった手順がある。大動脈カニュレーション用の糸と鉗子を先読みして準備する。
- ヘパリンとプロタミンは投与のタイミングが厳密。薬剤名を復唱し、渡し間違いを絶対に起こさない。
- 胸骨鋸を使う瞬間は麻酔科が換気を止める。合図に合わせて渡す。
- 止血の場面が長い。止血材、フィブリン糊、パッド付き縫合糸を常に補充しておく。
- 臨床工学技士、麻酔科、術者の三者が同時に動く。会話を遮らず、必要な情報だけを的確に伝える。
外回り看護師のポイント
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- 準備物品が最も多い手術のひとつ。チェックリストを使い、人工心肺回路、輸血、薬剤、ペースメーカー、除細動器を入室前に揃える。
- 臨床工学技士との連携が必須。人工心肺の開始・離脱の予定時刻と、必要な物品を事前に共有する。
- ヘパリン投与後はACT(活性化凝固時間)を測定する。測定のタイミングと結果の共有を担う。
- 輸血の準備は必須。血液型、クロスマッチ、在庫、払い出しの経路を入室前に確認しておく。
- 体温管理:人工心肺では意図的に低体温にし、離脱時に復温する。加温装置と室温を場面ごとに調整する。
- 除細動器(体外・体内パドル)をすぐ使える状態に。心室細動は日常的に起こりうる。
- 出血量と輸液・輸血のバランス、尿量、ACTを継続的に記録する。記録の正確さがそのまま安全につながる。
- 予測される合併症:低心拍出量症候群、不整脈、出血・再開胸、脳梗塞。ICUへの申し送り事項が多い。
緊急時の対応
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- 心室細動:直ちに体内パドルを術者へ渡し、除細動器の充電と出力設定を伝える。同時に抗不整脈薬を準備する。
- 人工心肺からの離脱困難:昇圧薬、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、補助循環(ECMO)の手配に備える。
- 大量出血:セルセーバーの回収、輸血の追加払い出し、止血材とフィブリン糊の追加を同時に進める。
- 緊急再開胸:胸骨ワイヤーカッターと開胸セットをすぐ出せる場所に置き、ICUでの再開胸にも備えて申し送る。
確認先・参考資料6
このページの本文は特定の文献を書き写したものではないため、文ごとの一次出典はありません。下記は記述が正しいかを確かめるための公的資料です。実際の手順は必ず自施設の手順書と指導者の指示を優先してください。
- 手術医療の実践ガイドライン日本手術医学会手術室の運用、清潔操作、手術体位、器械・機器の取り扱い、医療安全
- 指針・ガイドライン(安全な麻酔のためのモニター指針・気道管理ガイドラインなど)日本麻酔科学会麻酔方法、術中モニタリング、気道管理、筋弛緩モニタリング
- 手術看護業務基準ほか学会刊行物日本手術看護学会器械出し・外回りの業務基準、体位固定、器械カウント、申し送り
- 消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン日本外科感染症学会皮膚消毒、予防的抗菌薬の投与と追加、手術部位感染(SSI)の予防
- 褥瘡予防・管理ガイドライン日本褥瘡学会術中の体圧分散・除圧、褥瘡と皮膚障害の予防
- Mindsガイドラインライブラリ日本医療機能評価機構各診療科の診療ガイドラインの横断検索(学会公式版の所在確認)
リンクは2026年8月4日時点で実在を確認したものです。