肝部分切除術
肝切除
肝細胞癌や転移性肝癌に対して、腫瘍を含む肝臓の一部を切除する手術。所要時間は3〜6時間程度。肝臓は血流が非常に豊富で、肝離断時の出血コントロールが最大の課題。術中エコーで腫瘍の位置を確認しながら進める。
ここは要注意
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- 肝静脈損傷では空気塞栓が起こりうる。EtCO2の急低下は見逃さない。
- 輸血の準備不足は致命的。「たぶん出血しない」で始めない。
- プリングル法の遮断時間は肝障害に直結する。記録と時間の共有を絶対に怠らない。
- 術後の胆汁漏はドレーン排液の色で分かる。申し送りに必ず含める。
体位・麻酔・皮膚消毒
体位
仰臥位(右葉では右側を少し挙上)。上腹部を大きく開くため、肋弓を引き上げる開創器を使用する。
麻酔
全身麻酔+硬膜外麻酔の併用が多い。出血を減らすため中心静脈圧を低めに保つ管理(低CVP管理)を行うことがある。
皮膚消毒
乳頭ライン〜恥骨、側方は両腋窩線まで。
必要物品・器械
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基本セット
- 開腹基本セット
- 肋弓引き上げ用の開創器(ケント鉤など)
- 長い鉗子・鑷子・持針器
特殊器械
- 術中超音波(エコー)プローブと滅菌カバー
- 超音波吸引装置(CUSA)による肝離断
- ベッセルシーリングシステム、マイクロ波・ラジオ波凝固装置
- 肝門部遮断用のテープと血管遮断鉗子(プリングル法)
- 自動縫合器(肝静脈処理用)
ディスポーザブル製品
- 止血材(多種類・大量に)、フィブリン糊、シート型止血材
- 血管縫合糸(肝静脈修復用)
- ドレーン(肝離断面近傍)、洗浄用温生食
- 自己血回収装置(セルセーバー)の回路(悪性腫瘍では使用制限あり)
- ICG(蛍光で腫瘍・区域を同定する場合)
器械出し看護師のポイント
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- 肝離断は出血との戦い。止血材、フィブリン糊、縫合糸を切らさず、常に補充しておく。
- プリングル法(肝門部の血流遮断)を行う場合、遮断開始時刻を記録し、経過時間を声で伝える(遮断と解除を繰り返す)。
- 術中エコーは滅菌カバーをかけて清潔野で使う。カバーの装着手順を確認しておく。
- CUSAは先端が詰まりやすい。吸引と灌流の状態を確認し、詰まったら即対応する。
- 肝静脈を損傷すると空気塞栓のリスクがある。術者が静脈を扱う場面では特に集中する。
- 切除標本は病理に直結する。断端の向きを術者と確認して提出する。
外回り看護師のポイント
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- 大量出血のリスクが高い。輸血の準備(血液型・クロスマッチ・在庫・払い出し経路)を入室前に必ず確認する。
- 低CVP管理を行う場合、輸液を絞るため血圧が下がりやすい。麻酔科の方針を共有しておく。
- 肝機能が悪い患者では凝固能が低下している。新鮮凍結血漿などの準備状況を確認する。
- プリングル法の遮断・解除の時刻を記録し、術者と麻酔科に共有する。
- 長時間・大量出血で低体温になりやすい。加温装置と輸液加温を最大限使用する。
- 予測される合併症:出血、胆汁漏、肝不全、空気塞栓。ドレーン排液の色(胆汁様の黄色)を注意して申し送る。
緊急時の対応
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- 肝離断面からの大量出血:吸引を増やし、止血材とガーゼを大量供給。プリングル法の再遮断に備えて遮断鉗子を渡す。
- 空気塞栓(EtCO2急低下・血圧低下):直ちに報告し、術野を生食で満たす、頭低位左側臥位への体位変換に備える。
- 凝固障害が進んだら、新鮮凍結血漿・血小板の追加払い出しを急ぐ。
- 肝門部の血管損傷は極めて重篤。応援・輸血・血管外科的な修復物品を同時に手配する。
確認先・参考資料6
このページの本文は特定の文献を書き写したものではないため、文ごとの一次出典はありません。下記は記述が正しいかを確かめるための公的資料です。実際の手順は必ず自施設の手順書と指導者の指示を優先してください。
- 手術医療の実践ガイドライン日本手術医学会手術室の運用、清潔操作、手術体位、器械・機器の取り扱い、医療安全
- 指針・ガイドライン(安全な麻酔のためのモニター指針・気道管理ガイドラインなど)日本麻酔科学会麻酔方法、術中モニタリング、気道管理、筋弛緩モニタリング
- 手術看護業務基準ほか学会刊行物日本手術看護学会器械出し・外回りの業務基準、体位固定、器械カウント、申し送り
- 消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン日本外科感染症学会皮膚消毒、予防的抗菌薬の投与と追加、手術部位感染(SSI)の予防
- 褥瘡予防・管理ガイドライン日本褥瘡学会術中の体圧分散・除圧、褥瘡と皮膚障害の予防
- Mindsガイドラインライブラリ日本医療機能評価機構各診療科の診療ガイドラインの横断検索(学会公式版の所在確認)
リンクは2026年8月4日時点で実在を確認したものです。