術式一覧へもどる

外科下部消化管・肛門

Lap-Appe

腹腔鏡下虫垂切除術

急性虫垂炎に対して、3ポート程度で虫垂を切除する手術。緊急手術として夜間・休日に入ることが多く、準備の速さが求められる。穿孔して腹膜炎を起こしている場合は、大量の洗浄とドレナージが追加される。

ここは要注意!

  • 緊急だからと器械カウントや検体確認を省略しない。急いでいるときこそ事故が起きる。
  • 汚染操作の器械と清潔な器械を同じトレイに戻さない。線引きが崩れると創感染に直結する。
  • 培養検体は提出忘れが起きやすい。受け取った瞬間に容器へ入れる習慣をつける。
  • 頭低位の時間が長い。眼球・顔面・肩の圧迫を、ドレープを掛ける前に必ず最終確認する。

体位・麻酔・皮膚消毒

体位

仰臥位・両上肢体側固定。術中は頭低位(トレンデレンブルグ)+左側臥位にして小腸を頭側へ寄せる。ずり落ち防止の固定を確実に行う。

麻酔

全身麻酔(気管挿管)。緊急例は絶食時間が不十分な「フルストマック」として扱われ、迅速導入(RSI)となることが多い。吸引をすぐ使える状態にし、輪状軟骨圧迫の介助に備える。

皮膚消毒

剣状突起下〜大腿上部、側方は両腋窩線まで。穿孔例では洗浄範囲が広がるため、やや広めに消毒する。

必要物品・器械

基本セット

  • 開腹基本セット(穿孔例・開腹移行に備えて待機)
  • メス・剪刀・鑷子・コッヘル・持針器

特殊器械

  • 気腹装置+気腹針、トロッカー(12mm×1、5mm×2)
  • 腹腔鏡・カメラヘッド・光源ケーブル
  • 把持鉗子・剥離鉗子
  • 電気メス、必要に応じて超音波凝固切開装置
  • 自動縫合器(ステープラー)または結紮用ループ(エンドループ)
  • 吸引洗浄装置(腹膜炎例では必須)

ディスポーザブル製品

  • 標本回収バッグ(創感染予防のため必ず使用)
  • エンドループ/ステープラーカートリッジ(サイズ違いを複数用意)
  • 洗浄用温生食(腹膜炎例では大量に準備)
  • ドレーン(ダグラス窩・右傍結腸溝など)
  • 培養検体用スピッツ(好気・嫌気)

器械出し看護師のポイント

  1. 緊急入室が多いため、いつもの並べ方を崩さないことが最速。焦って配置を変えると探す時間で逆に遅くなる。

  2. 虫垂間膜の処理 → 根部の結紮(エンドループ)またはステープラーでの切離が山場。エンドループは結び目を崩さないよう静かに渡す。

  3. 自動縫合器はカートリッジの高さ(色)を術者と声に出して確認してから装填し、渡す。

  4. 穿孔例では膿汁・腸内容による汚染操作になる。汚染した器械は別トレイに分け、清潔野との線引きを明確にする。

  5. 培養検体は術者から受け取ったら直ちに提出容器へ。好気・嫌気の別と採取部位を確認する。

  6. 虫垂は必ず回収バッグに収納して摘出する(ポート創の汚染・創感染を防ぐ)。

  7. ガーゼ・針・ステープラーカートリッジの数をカウント。緊急でも省略しない。

外回り看護師のポイント

  1. 緊急受け入れでは短時間での情報収集が勝負:最終飲食時刻、既往歴、内服薬、アレルギー、感染症、女性では最終月経(異所性妊娠などの鑑別)。

  2. 迅速導入(RSI)の介助:吸引を接続して手元に用意し、指示に従って輪状軟骨圧迫を行う。誤嚥に備えて体位変換の準備も。

  3. 頭低位では顔面浮腫・眼球圧迫・肩の圧迫(腕神経叢損傷)に注意。肩当ての使用可否は施設ルールを確認する。

  4. 発熱・脱水を伴っていることが多い。輸液速度、尿量、循環動態(頻脈・低血圧)を継続的に観察する。

  5. 予防的抗菌薬は執刀前60分以内の投与を確認。手術が長引く場合は追加投与のタイミングを術者・麻酔科に声かけする。

  6. 洗浄量が多くなるため、出血量の算出では使用した洗浄液量を正確に記録しておく。

  7. 予測される合併症:遺残膿瘍、創感染、出血。ドレーンの本数・留置部位・排液の性状を記録し、病棟に確実に申し送る。

緊急時の対応

  1. 麻酔導入時の誤嚥:吸引をすぐ渡し、頭低位・側臥位への体位変換に備える。気管支鏡の手配も想定しておく。

  2. 敗血症性ショック(血圧低下・頻脈・尿量減少):急速輸液の準備、昇圧薬・動脈ラインの追加介助、血液培養の採取に備える。

  3. 腸管損傷・大量汚染が判明したら:洗浄用の温生食を大量に追加し、ドレーンとドレナージ物品を増やして手配する。

  4. 開腹移行の判断が出たら:開腹セットを開け、ドレープの追加・照明の調整・人員の追加を同時に進める。

外科の他の術式

今日もおつかれさま。ひとつ覚えたら、明日はもう少しラクになります。