術式一覧へもどる

整形外科人工関節

TSA / RSA

人工肩関節全置換術

変形性肩関節症や腱板断裂性関節症に対して、肩関節を人工関節に置き換える手術。腱板が壊れている場合は、上腕骨側と肩甲骨側を逆に組む反転型(リバース型・RSA)を用いる。所要時間は2〜3時間程度。

ここは要注意!

  • 標準型と反転型の取り違え致命的使用する型を全員で共有してから開封する。
  • ビーチチェア位の低血圧は脳虚血につながる。血圧の数値を「いつもより低い」で流さない。
  • 腋窩神経は肩関節のすぐ近くを走る。術後の三角筋の動きの観察方法を申し送る。
  • 術後の可動域制限を守らないと脱臼する。装具と制限内容を正確に伝える。

体位・麻酔・皮膚消毒

体位

ビーチチェア位(座位に近い姿勢)。頭部の固定と、術中に上肢を大きく動かせるようにすることが必要。血圧低下(脳灌流)に注意する。

麻酔

全身麻酔+腕神経叢ブロック(斜角筋間ブロック)の併用が多い。

皮膚消毒

患側の頸部〜肘まで、肩全周と腋窩を含めて消毒。上肢はストッキネットでフリーにする。

必要物品・器械

基本セット

  • 整形外科基本セット
  • ホーマン鉤、骨膜剥離子、骨鋭匙
  • 持針器・鑷子・剪刀

特殊器械

  • インプラント一式(上腕骨ステム、グレノイドコンポーネント、標準型/反転型の両方)
  • トライアルインプラント一式
  • 専用インスツルメント(リーマー、ラスプ、グレノイドガイド)
  • 電動骨手術器械(ボーンソー、リーマードライバー)
  • 骨セメント+混和装置(使用する場合)

ディスポーザブル製品

  • 洗浄用生食、ボーンワックス、局所止血材
  • ドレーン、防水ドレープ、ストッキネット
  • 縫合糸(腱板・肩甲下筋の再建用に強い糸)
  • 術後の肩外転装具

器械出し看護師のポイント

  1. 標準型と反転型でインプラントも器械もまったく違う。どちらを使うか術前に必ず確認し、両方待機させる。

  2. インプラントはサイズ確定後に開封する。トライアルと本製品を物理的に分けて置く。

  3. グレノイド(肩甲骨側)は術野が深く狭い。長めの器械を選び、術者の視野を遮らない。

  4. 肩甲下筋腱を切離して展開し、最後に修復する。修復用の強い糸を閉創前に準備しておく。

  5. 上肢を大きく動かしながら進む。ドレープの清潔を保ったまま動かせるよう配慮する。

  6. インプラントのロット番号シールは開封時に外回りへ渡す。

外回り看護師のポイント

  1. ビーチチェア位では脳灌流圧が下がりやすい。血圧の測定部位と脳との高低差を麻酔科と共有し、低血圧に注意する。

  2. 頭部固定具の緩みは頸椎への負担と気管チューブトラブルにつながる。固定後に必ず確認する。

  3. 斜角筋間ブロックによる横隔神経麻痺で呼吸苦・SpO2低下が起こりうる。覚醒後の呼吸状態を観察する。

  4. インプラントのサイズ・ロット番号・型(標準型/反転型)を確実に記録する。

  5. 術後は肩外転装具で固定する。装具の準備と装着方法、可動域制限を病棟へ申し送る。

  6. 予測される合併症:脱臼、腋窩神経麻痺、感染、インプラントのゆるみ、肩甲下筋の再断裂

緊急時の対応

  1. ビーチチェア位での血圧低下:直ちに麻酔科へ報告し、頭側を下げる体位変更の指示に備える。

  2. 術中の上腕骨骨折:追加のプレート・長いステム・ケーブルシステムを速やかに手配する。

  3. 大量出血では吸引と止血材を追加し、出血量を再計算して麻酔科へ報告する。

  4. 術後の呼吸苦(ブロックによる横隔神経麻痺)は回復室で出る。申し送りで必ず伝える。

確認先・参考資料

このページの本文は特定の文献を書き写したものではないため、文ごとの一次出典はありません。下記は記述が正しいかを確かめるための公的資料です。実際の手順は必ず自施設の手順書と指導者の指示を優先してください。

リンクは2026年8月4日時点で実在を確認したものです。

整形外科の他の術式

今日もおつかれさま。ひとつ覚えたら、明日はもう少しラクになります。